鏝絵(こてえ)という技術をご存じでしょうか。
漆喰を壁に塗りながら、鏝(こて)で図案を“描く”左官の装飾技法です。
昔の蔵や旅館の壁で見かける、あの立体的な富士山や鶴。
鏝一本であの存在感が生まれるのです。
当施設のご利用者様に左官職人の方がいらっしゃいます。何点もの作品を施設にご寄贈いただきました。
鏝絵は、筆ではなく鏝で線を刻み、
漆喰の乾き具合ひとつで仕上がりが変わる繊細な技。
派手さこそありませんが、
“家を守る”“家族の無事を願う”という祈りが込められてきました。
飾りではなく、暮らしに根づいたアートです。
職人が鏝を動かすたび、
その手の中で積み重ねてきた時間や想いが、
壁の上にそっと形を持ちはじめます。
堅実な暮らしの中に美を生むこと。
それを支えてきた職人たちの技が、今も静かに息づいています。

